最低王子と小悪魔女

 頬がゆるんでニヤニヤしてるのが心の底から腹が立つので、目をつぶっているのをいいことに、思いっ切りつねってやる。
 痛い痛いと言いながら大人しくしゃがむんだから、やっぱりこいつはM確定なんじゃないだろーかと思ってしまう。
 ……あるいは、慎吾の言うところの従順・忠実な犬ということか。


「はーるな。まーだー?」

「……後で覚えてろよ……」


 人の気も知らずのんきに急かしてくる慎吾に向けて、口の中で思いつく限り呪いの言葉をつぶやく。
 ひとつ魔法が解けても、また別のをかけてしまいそうな勢いで。


 あたしは覚悟を決めた。
 とりあえず、解く魔法もかける魔法もひとつずつ。


 最低王子を、あたしだけの王子様にしてやるんだ。





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