最低王子と小悪魔女
「あ、そうだ。忘れないうちに言っておくけど、その第二ボタンはあたしのだからね」
「え?」
「あたしにちょうだいって言ってるの。……なによ、その意外そうな顔は。文句ある?」
「いや文句はないし、もちろん波月にあげるつもりだったけど。自分から言い出すのは珍しいなって思っただけ」
確かに慎吾の言うとおり、あたしが『第二ボタンちょうだい』って言うのは初めてだった。
「あのね、あたしから言い出す余地がなかったとは思わない? 小学校中学校と、自ら第二ボタンをもらってくれって押し付けてきたのはどこの誰だっけ?」
「俺」
「でしょ?
大体、あんたは自分の価値をいまいちよくわかってないのよね。何ももらってくれって幼なじみに押しつけなくても、欲しいって子がどれだけいたことか」