最低王子と小悪魔女

 心情的にどうかと思うが、それこそ競りにでもかけたらとんでもない値段がついていただろう。
 高校時分ほどではないにしろ、それくらいの人気だったのだ。矢柴慎吾という奴は。

 その自覚がないというのも、また困りものなのだ。


「とか言って、他の子にあげたら絶対怒ってたよな」

「当然でしょ」


 ヤキモチ焼きなのに、ちっとも素直じゃない。この難儀な気質で何度も慎吾を苦笑いさせたっけ。

 その悪癖は現在進行形なのに、今は何だか懐かしい。
 これからまた、新しい毎日が始まるからか。


「そっかー。じゃ、せっかく波月が欲しいって言ってくれたんだから、ボタンだけじゃなくて俺ごと全部あげるよ」

「はぁ? 何言って――」

「あ、違った。もう全部波月のだったっけ。失敗失敗」

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