最低王子と小悪魔女

 何よりあたしの不安をあおるのは、ここ一年で覚えた慎吾のたくらみ顔――よからぬこと度MAXのこのスマイル。

 小悪魔どころじゃない。立派に成長した悪魔サマがここにいる。


「忘れたとは言わせないよ? 波月がこっそりかけてる、俺が波月のものって魔法。
それと――」


 やばい、逃げろ。
 あたしの中の、誰かが急かす。このままでは危険だと。


 だが本能の呼びかけに、行動が間に合わなかった。

 なので、クラスメイト全員(+α)の視線を一身に受ける中、あたしは目を開けたまま、慎吾のキスを受ける羽目になる。
 冷やかしの野次が飛ぶのも、慎吾はまるで気にもとめずに、だ。


 限界ギリギリに見開いた視界いっぱい、慎吾の顔。目が合うと、余裕しゃくしゃくに笑ってみせる。
 その顔、マジでムカツクんですけど?

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