最低王子と小悪魔女

 遠くから、慎吾が手招きをする。さすがに『打倒・矢柴』の敵陣に乗り込む度胸はないわけね。

 仕方なしにクラスの輪から離れると、ついさっきまで鬼のオフェンスっぷりを見せつけていた奴とは思えない、ユルイ空気で慎吾は笑う。


「どうだった、俺のアリウープ?」

「誰が一人アリウープをしろって言ったっけ?」


 女の子みたいに長いまつげの瞼をぱちぱちさせ、それから小首をかしげた。
 なんでこの男、やることなすこと可愛かったり、格好良かったりんだ。腹立つ。

< 33 / 267 >

この作品をシェア

pagetop