最低王子と小悪魔女
昼休みも半ば。
教室の人影もまばらで、この沈黙がやけに長く、不思議と特別なものに感じる。
あたしが次の言葉を待つのに飽きる前に、時任君がようやく口を開いた。
「本当は、勝ったら言おうって思ってた。カッコ悪いし。……でも、やっぱ今言うよ。
黒木、俺と付き合ってくれないか?」
「……へ?」
それほど大きくない、むしろひそめた声。
でもあたしの動揺をあおるのには十分過ぎるものだった。
そしてあたしの混乱をよそに、時任君は追い討ちをかけるように続ける。