最低王子と小悪魔女

「……なんで、慎吾がそのこと知ってるの?」

「もう学年中の噂になってるよ。波月も時任も、結構有名人だし」


 あたしの場合は100パーセント、あんたのせいだけどな。
 ……そんな、いつもなら平気で飛ばせる軽口も出てこない。この逃げ出したいくらい、ピリッとした空気を打ち破りたいのに。

 慎吾は、フェンスの金網に右手の指をからませた。
 ビルを焦がすように落ちていく夕日を臨むように、ピンと背筋を伸ばして立っている。

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