最低王子と小悪魔女


 席に着いた第一声が、この軽さ。
 彼は気付いていないのだろうか。このクラス全員の、あたしたちへの異様な注目っぷりに。
 さしずめ、動物園のパンダである。

 あののっぺりしてて何にも考えてなさそーな白黒動物が、年がら年中こんな居心地の悪さを感じているかと思うと、共感と同情の念を禁じえない。


「まあ、ちょっとは気になるけど。黒木の隣になれたってのが嬉しいから、別に平気かな」


 そんな恥ずかしいことをサラリと言ってのけてから、ひとつ咳払いして声をひそめる。

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