揺れない瞳



まだ言葉も交わしていない目の前の女の子に気持ちはぐっと掴まれてしまった。

携帯を手にしたまま、妙に明るく浮かれていた。
今までとは違う何かが、心を包み始めていた時。

じっと見つめる視線を感じた。

ふと視線を上げると、女の子からの視線が俺の携帯に注がれている。

はっと驚いたような表情は、俯いていた時よりも可愛くて大学生というよりも高校生のよう。

小さな顔にはっきりとした大きな瞳は、何人もの男の目をひいてきたんだろう。
そう思うと、なんの権利もない俺なのに苛立ってくる。

そんな苛立ちを見せず、軽い口調で言葉を交わして。

俺と結乃の人生は、繋がった。

ひまわりのモチーフを携帯に揺らす二人の心も、大きく揺れながら。

ささやかな幸せを得たいだけの毎日をおくる二人は繋がった。

無性に会いたくなってバイト先まで押しかけたり。
電話の悲しげな声が気になって家に無理矢理上がり込むだけじゃなく抱きしめて何度もキスを落として。

俺の一方的な想いに戸惑って泣き出す結乃が愛しくてたまらない。
俺自身どうしてこんなに愛しいのかわからない。、


芽依ちゃんが言った、『私に似てるの』

その言葉が俺を縛る。

芽依ちゃん結乃は違うのに。

結乃を見ていると、その向こうに芽依ちゃんの悲しげな笑顔が揺れている気がして、心が痛むのをどうすることもできない。



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