揺れない瞳
大きな声で驚く彼女は、私をまじまじと見つめたまま言葉を失ってた。
そんなに驚く事なんだろうか…?
私がこのドレスのイメージに合わないのかな…やっぱり身の程知らずのウェディングドレスだったかな。

ほんの少し落ち込みながら、慣れたように表情を消した。
小さな頃から悲しい気持ちを隠す術ならいくつも持ってるし…。

やっぱり、私には単純明快な幸せなんて遠くてつかめないのかも。
好きなものや欲しいものは全てすり抜けて手に入らなかったから…。

苦笑ともあきらめとも取れる笑いでその女性を見ると。

「このドレス、ショーで使わせてもらいたいんだけど」

力強く掴まれた腕を離そうともせず、大きな目を輝かせて予想もしない言葉をこぼした。

「は…?ショー?」

なんの事かわからないまま思わず問いかけた私から視線を逸らさないまま、大きくうんうんと頷く彼女は冗談を言ってるようにも見えないし…・
からかってるとも思えない。

「私ね、『sweet sweet』でデザインやってる岡崎芽実っていうんだけど、今度うちのブランド主催で若手の作品のショーをやるの。
このドレス見た瞬間から、不破結乃さんに連絡とってくれってずっと頼んでたのよ。

…ねえ、このドレス出品してみない?」

「えっと…ショーって…無理です…」

勢いに圧倒されてどういっていいのかわからないけど、とりあえず無理。
ショーに自分の作品なんて、それほど身の程知らずだし。
この作品にそれほどの価値があるとも思えないし…。

「どうして?このドレスがコンクールでどういう結果になっても、私は自分が担当するショーで明るいスポットライトを浴びさせてあげたいのっ」

「はあ…。でも…」

「でも、じゃないの。本人に直接会えてラッキーだったわ。
詳しい説明をしたいから、上の事務所に来ない?
っていうか、来て」

「でも…」

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