揺れない瞳
強気な彼女…岡崎さんに気圧される雰囲気に負けそうでどうしようもない。
私が今までに経験した事のない展開にびっくりしてどう反応していいのかもわからないし…。私にとってありがたい言葉が伝えられてるのはわかるけど、まさか自分がそんな位置にいるなんて思えなくて…。
何も言えない。
怯えにも似た心境で茫然としていると、
「無理矢理はやめろよ」
低い男性の声がした。振り返ると、まさに今岡崎さんの頭を軽くげんこつで叩く人。
甘い表情には怒ってる雰囲気はないけれど、どこか呆れ顔。
「奏···」
岡崎さんが呟いた。この男性は、そうさんって言うらしく見るからに高そうなスーツが良く似合う素敵な人。
私から岡崎さんをそっと離すと、申し訳なさそうな瞳を私に向けた。
「こいつの勢いは悪気はないんだけど、驚いただろ?」
「あ…いえ…」
「このドレス、最終選考に残って一目見た時から気に入ってたから。
不破さんに会って興奮してるんだ」
くすくすと笑ってる彼の手は、岡崎さんの頭をゆるゆると撫でていて、どう見ても二人は親しい関係。
岡崎さんも、拗ねたような表情を見せながらも体は彼に預けているし。
仲の良さは一目瞭然。
「で、不破さんはこのドレスを見に来たんでしょ?」
「はい…今日大学の先生から聞かされて…びっくりして」
「ふふっ。今日解禁の情報だったからね。
明日にはもっと驚くよ」
「え?」
岡崎さんは意味深に笑ってるだけで、私には理解できなくて…。