揺れない瞳


「芽実。不破さん困ってるだろ。

…明日、正式に話がいくと思うけど。

不破さんのこのドレスをベースにして、将来『sweet sweet』からウェディングドレスを発表したいんだ」

…えっと…?
今、聞こえたのって。

私のドレスをベースに?
『sweet sweet』っていうかなり有名なブランドから?

「嘘…」

思わず出たのはそんな言葉。
目の前の二人をじっと見つめたまま、体はかたまってしまって思考回路もストップして回らない。
ただただ。



としか考えられない。

「あ…ごめんね。
私、岡崎芽実っていって『sweet sweet』のチーフデザイナーやってます。

で、この男前は私の旦那様で副社長の岡崎奏。

…よろしくね?」

よろしくね…と言われても。
私は呆然と二人を見つめるしかできないし、どうすれば跳ねてる鼓動を抑えられるのかもわからない。

悪戯っ子のような笑顔の岡崎芽実さん。

そういえば、雑誌で見たことがあるように思う。
売れ行き芳しいブランドの牽引役として、そして見た目も綺麗な女性として印象に残ってる。

まさかこんなお茶目な人だとは思わなかったし副社長夫人だなんて考えてなかったけど。

隣に寄り添う奏さんの目に浮かぶ温かな愛情を見れば仲のいい夫婦だとすぐにわかる。

本当うらやましいくらいに美男美女の二人。

< 115 / 402 >

この作品をシェア

pagetop