揺れない瞳
結局、私自身の気持ちは私がちゃんと追いかけないといけない。
央雅くんへの想いが私の毎日を楽しいものにしているのは間違いなくて、これまで気にしなかった洋服やお化粧にも意識を向けるようにもなった。
誰からも特別な注意を払われなかった過去をひきずって生きてきたけれど、そんな長い日々をひっくり返すように私を変えていく央雅くん。
初めて男性の温かさを教えてくれた優しい人。
私を大切にしてくれているとちゃんと信じさせてくれる人。
それでいて、その穏やかな見た目の向こう側を見せない人。
時々、私を見つめながら苦しそうに口元を歪める人。
きっと。
単純な想いで私を大切にしてくれているわけじゃないんだとわかる。
何かを抱えて苦しんでいる事を誰にも見せないように、気を遣っている。
そんな央雅くんに惹かれている自分に嘘はつけないし、やっぱり近くにいて欲しい。
切なく、そう願ってしまうけれど。
今はわからない央雅くんの想いを知る時があるならば、私はどう受けとめるんだろう。
人の気持ちに踏み込むことに慣れてない私に、距離を縮める代償を払うことはできるのかな。
今までに触れた事のない自分の感情に素直に従った結果が悲しいものならば、受け止められるのかな。
後ろ向きにしか考えられない自分は相変わらずだけど、やっぱり、どんなに不安で緊張しても、央雅くんの傍にいたいって思う気持ちは隠せない。