揺れない瞳

央雅くんと私の関係を考えて、どうしても落ち込んでしまう気持ちに拍車をかけるように、部屋に着いた途端にメールが届いた。

ちゃんと部屋に入ったかを心配してくれる央雅くんからのメールだろうと、カバンから携帯を取り出した。いつもなら、心ときめく央雅くんからのメールだけど、今はそんな気持ちにはなれない。
重くて切ない気持ちを、無理矢理心に押し込めながら、画面を確認した。

「え?」

心臓が、ずきっと音をたてて痛くなるのを感じる。そのメールは、央雅くんからのメールではなくて、思いがけない人からのメールだった。

父親からのメール。

この前、大学の前で待ち伏せされた時以来、父とは連絡をとっていなかった。
普段も、連絡する事があれば、戸部先生を通じて伝えてもらっているせいか、父からの突然のメールに驚いた。

無意識のうちに握りしめた携帯を、しばらく見つめた後、無視する事もできずメールを開いてみる。

『結乃の作品、見たよ。おめでとう。
親ばかかもしれないけれど、一番輝いていたよ。
審査の結果がどうであれ、お祝いさせてくれないか。

他の誰でもない、結乃に会いたいんだ』

「っなんで。なんで今更そんな事…」

央雅くんと一緒にいる時から我慢していた気持ちが、ぐぐっと胸に溢れてくる。
泣きたい気持ちを抑えていたのに、瞳の奥がどんどん熱くなるのを止められない。

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