揺れない瞳
生まれて初めて、恋をした。大切にしたいと思える愛しい人、央雅くんと出会った。
でも央雅くんの気持ちがわからないばかりか、央雅くんにとって私は、芽依さんの代わりだと気付いてしまった。
それでも、央雅くんに寄せる想いはどうしようもできない。
そんな私の不安定な気持ちに付け入るように届いた父親からのメール。
弱っている私の心を狙っていたかのような言葉。
『他の誰でもない』
思わず、その言葉にすがってしまいそうになる。
これまでは、心を一切閉じて、父親の存在から目をそらしていたのに、そんな強がりにも似た本心に向けて、言葉を投げられたら。
苦しくて、崩れてしまう先に、父親を求めてしまいそうで、怖い。
父親がいなくても、しっかりと生きていけると信じていた気持ちが、揺らいでしまう。
そんな、今まで感じた事のない感情にどう応えていいのかも、どうするのが正しくて正しくないのかもわからない。