揺れない瞳
央雅くんが、そっと私の体を離して顔を覗き込んでも、私は何も言えないまま、立ってるだけしかできない。
こうして目の前に央雅くんがいるという、今の状況を理解できていないし、相変わらず、央雅くんの気持ちがよくわからない。

「さっき俺と結乃が別れてからまだ10分くらいだぞ。そんな短い間で大泣きしてるなんて、その原因は俺だって考えるのが、普通だろ?」

「そう言われても……そうじゃないんだけど……」

「じゃ、どうして泣いてるんだ?何か理由があるからだろ?」

強い言葉で問い続ける央雅くんは、自分が納得する答えを、私から聞き出すまでは諦めないとでもいうような強気な声をしていた。

「俺は、結乃を泣かせる為に、一緒にいようと思ったわけじゃないんだけど。
結局は、泣かせてしまったのか?」

短い付き合いだけど、こんなにも私に食い下がってくる央雅くんは初めてで、戸惑う以前に新鮮にも思えてくる。

「私が泣いた原因は、央雅くんじゃなくて、父親からのメールなの」

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