揺れない瞳
小さくため息を吐いた。
本当なら、父親との関係をも聞かれそうだから、言いたくはないけれど。
ここまで強気な央雅くんに対して、ごまかしは通用しないようだと諦めて、棒読みに近い抑揚で言った。

「父親?……なんで?」

「えっと……。でも、央雅くんが聞いて、楽しい話じゃないよ」

「それは、話を聞いてから、俺が決める。結乃が泣いた理由を、教えて」

諦めない央雅くんの強い瞳に捕らわれて、どこから話せばいいんだろうかと俯いた。

そして、父親へのすがるような想いに気付いてしまった今、その複雑な私の気持ちもちゃんとわかってもらえるように、話す事ができるのかと悩んでしまった。

そっと央雅くんを見上げると、私の話を待っている表情とぶつかった。
逃げる事を許さないと語る瞳に見据えられると。

「とりあえず、コーヒーでも入れるね」

腰を据えて、ちゃんと央雅くんに話してみようと思った。


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