揺れない瞳

私がずっと気付かないふりをしていた、父さんへの縋るような気持ちを認めてからというもの、次々と溢れてくるあらゆる感情。

高校生の頃から、私は、大学に通って洋服作りを勉強したいと夢見ていた。
洋裁や手芸が大好きで仕方ない私は、被服の勉強をしたくてたまらなかったけれど、両親から見放されていた私には、大学進学なんて無理だと諦めていた。
だから、進学せずに就職するしかないと考えていた。

だから、突然、『高校を卒業したら、進学していいよ』と父から言われた時、信じられない気持ちと、嬉しい気持ちが混在して、すぐには決断できなかった。

大学で、自分のしたい勉強ができる嬉しさ、未来への希望。
私には到底無理だと諦めていた、自分の望む時間を手に入れる事ができるという夢のような申し出。

どうして、父が突然そんな事を言い出したのかがわからないという、不安感を抱えながらも、それ以上に、夢を現実にしたいという思いが強かった。

そして、結局。
父へは素直になれないまま、反抗した様子を露わに、嫌々受け入れたようなふりをして、私自身が求め、願っていた未来を手に入れようと決めた。

父からの申し出を受け入れたあと、一年間予備校に通って、今の大学へ入学した。


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