揺れない瞳
「私は……父さんが私を捨てたことを盾に、どれだけ経済的に助けられても、気持ちを寄せられても、それを素直に受け入れられなかった。
父から会いたいって言われても、頑なに拒絶して、父さんから遠ざかってたのに」

この前、大学の前で悲しげな様子で私を待っていた父の顔を思い出すと、父を拒絶し続けてきた自分の態度が申し訳なく思える。
これまでにはない、その感情が、私をどんどん追いつめる。
父に対して、娘としての普通の幸せを求める感情は自然だと思うし、両親から捨てられた事実を忘れられない自分が、変だとも思わない。

それでも、私が父に見せてきた冷たい態度の裏の、父への縋るような想いは消せないとも、気付いた。

「私は、結局、一人ぼっちが怖いの。父から与えられるのは、完全な愛情じゃないし、今更どうしてって戸惑うけれど、それでも私は、私を気にかけてくれる父に縋っていたの。私の存在を認めてくれる、父の愛情が泣けてくるほどに嬉しいの……」

途切れ途切れに話した後、気付けば、涙が頬を伝っていた。
さっきまで、あれだけ泣いていたのに、涙は限界を知らずに流れるんだな。
明日の朝は、きっと目が腫れ上がってるに違いない。

そして、小さく息を吐いて、気持ちを落ち着かせた後、黙って私の話を聞いてくれる央雅くんの瞳をじっと見た。

「父が私を気にかけてくれるのなら、私に向けられる愛情が、たとえ完全な愛情じゃなくてもいいって、そう思う私って愚かだと思うけれど、そんな私の愚かな気持ちは、央雅くんに対しても、感じるの」


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