揺れない瞳
あんなに綺麗で優しくて、包み込むような愛情を私に与えてくれる女性。
落ち着いて考えると、芽依さんと私を比べるのも、申し訳ないくらいの素敵な女性だ。
似ている部分なんて、ないと思うけれど。
私を見る央雅くんの気持ちや言葉の向こう側には、いつも芽依さんが笑っている。

「央雅くんは、私を見ながら、いつも芽依さんを見てる」

言わなくて済むのなら…言いたくはなかった。

「私に、完全な愛情をくれない人に縋ってしまう自分が嫌だけど、それでも、好きな人の側にいたいって思う。私を捨てた父に対してもそう思うし……私の向こう側に、芽依さんを見ている央雅くんにも、同じ気持ちを感じるの。

私の父親と央雅くんが繋がるっていうのは、そういう事なの」

央雅くんに向けて最後に言い切った言葉が、私の全てかもしれない。

たとえ完全でない愛情だとしても、それすら求めてしまう。
そして、それでも側に寄り添いたいと思ってしまう。

「ふふ……言っちゃった……」

涙を止められないまま、どうにか笑顔を作って央雅くんを見つめると、その整った顔は、苦しげに歪んでいて、口元も固く閉じられていた。

「私、央雅くんが好き」

追い打ちをかけるような私の小さな声だけが、部屋に響いた。
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