揺れない瞳
芽依さんが抱えてきた寂しさの原因が、自分にあると思い込んでいる央雅くんは、とりたてて後ろ向きな様子を見せるわけでもなく、投げやりな口調でもない。
それどころか、軽く笑いながら話す表情からは、芽依さんへの感情を受け止めている強さすら出ている。
夏基さんと結婚した芽依さんへの思慕の情を捨てきれなくて、そのつらさに苦しんでいるのかと思っていた。
けれど、温かい表情で芽依さんと夏基さんの事を話す央雅くんを見ていると、それも違うように思えてくる。

央雅くんの本心が、更にわからなくなった。

それでも、私は芽依さんに似ていると、はっきりと言われてしまった。
予想通りだったとはいっても、その言葉は私を傷つけた。
私自身ではなくて、芽依さんへの愛情から私に興味を持ってくれたのかと、諦めにも似た思いで溢れる。

央雅くんが好きだと告げた私の言葉には、央雅くんの気持ちを動かす力はなかったのかもしれない。
たとえ、私を大切にしてくれても、私が持つ央雅くんへの思いとは違っているんだろうと思う。
芽依さんへの思いを聞かされてから、告白してしまったことを後悔する気持ちがどんどん大きくなる。私には、央雅くんを惹きつける魅力なんてないに違いないのに。
思わず口走った言葉を取り戻せるのなら、今すぐにでも取り戻したい。


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