揺れない瞳
「あ、私はだめだめ」
「え?」
加絵ちゃんの方がモデルに向いてるって思った私の気持ちを読んだかのように、加絵ちゃんは笑いながら拒否した。
ふふふっとこぼれる小さな声には、余裕も感じられる。
「だって、私ってかなり綺麗でしょ?身長もあるし、モデルのスカウトだってしょっちゅうされるし。
そんな私がショーになんて出たら着てる服より自分の方がが目立っちゃって服が死んじゃうよ」
朗らかに笑い飛ばす加絵ちゃんは、確かに綺麗で、大学でもかなり有名な存在。
本人が言う通りモデルのスカウトも半端な数じゃない。大学までわざわざスカウトにくるモデル事務所の人もいるくらい。
そんな日常を過ごしているから、本人が一番自分の事を理解している。
そして、スカウトに対しても上手にやり過ごす術を覚えていて、難なく断っている。
平凡な私からすれば、こんなに求められているんだから、いっそモデルをやってみたらいいのにって思うんだけどな。
「結乃だって、お人形みたいにくりっとしたお目目で可愛いのに。
友達の男の子からコンパに呼んでくれっていつも頼まれるよ。
知らなかったでしょ?」