揺れない瞳
「加絵ちゃん…」
『自分の思うように』って言われても、どう気持ちをすすめていいのかわからない。確かに、そうしたい気持ちは昔からあるけれど。
心から頼れる人がいないせいで、これからを一人きりで生きる覚悟をしている私には
そんな事は無理だと、何事も諦めてばかりいる。
自分が望む事を実現する大変さは、小さな頃から身をもって知っている。
「少なくとも、ショーに出るっていう選択は結乃次第だし。
芽実さんとのつながりをきっかけにして、結乃の将来を考えるのも結乃次第」
「うん……。そう……だね」
加絵ちゃんはしっかりと私を見つめながら、そんなに強い口調ではないけれどとても大切な事を私に言ってくれているとわかる。
重い雰囲気にしないように気を付けながらも、ふざけた態度は許してくれなさそうな瞳と口調に、私も気持ちがきゅっと引き締まる。
「人前に出るのが苦手だっていう事も、それを克服したいって結乃が望めば変わるかもしれない。何もかもが、結乃次第で動いていくんだからね。
そう、何もかもだよ。結乃が強く願って、その気になって動けば、多くのことは叶うんだよ」