揺れない瞳
私がその気になればって加絵ちゃんから何度も言われて、そうだなと、私の頑なな気持ちが揺れるんだから、加絵ちゃんの言葉って重い。
決して押し付けがましいわけではないけれど、私が真面目に考えるように、逃げないように、ちゃんと私に言い落としてくれる。

「……とにかく、自分が本当は何を望んでいるのか、考えてみるいい機会には違いないでしょ」

自分がどうしたいのか。
自分は何を望んでいるのか。

そう自問した途端、すっと心に浮かんでくる思いに気付くと、心はぎゅっと掴まれるように痛くなる。

ようやくの思いで告げた私の気持ちへの答えをもらえない、曖昧な関係の央雅くん。
そして、あまりに悲しすぎた過去によって心の奥に閉じ込めた父と母への本当の想い。

私が望んでいるものなら、よくわかってる。ずっと前からわかってる。

どれだけ泣いて求めても得られなかった。
無理だと気づいた小さな頃に、とっくに諦めた想い。

私を心から、ちゃんと愛してくれる人を求めてる。

今更、私を愛してくれる人を求めるのは、遅くはないのかな。

私がその気になれば、私の気持ち次第で、未来は変わるのかな。

これまで考えもしなかった想いが溢れて、どうしようもない期待と不安で体中が満ちていった。
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