揺れない瞳
「じゃ、気を付けて帰って下さいね。……結婚式、また写真でも見せて下さい。
失礼します」
にっこりと笑って、私は更衣室へ向かった。
まだ何か言い足りなさそうな表情の川原さんは、小さく苦笑して
「ありがとう」
と呟いた。
今日知り合ったばかりの川原さんとの数時間は、慌ただしくて訳の分からないものだった。私のウェディングドレスを婚約者の紗代子さんに着せたいと、無理矢理の展開を強いた川原さんの本心は、結局は別のところにあった。
そして、婚約者の紗代子さんの本心も、川原さんにちゃんと伝えられていなかった。
私が作ったウェディングドレスなんかよりも、やっぱり愛する川原さんの作ってくれたウェディングドレスを着て結婚式を挙げたいと話す紗代子さんは可愛らしくて。
二人の痴話げんかに巻き込まれただけの私は単なる傍観者。
関係のない第三者だ。
それでも、なんだか気持ちは温かかった。
誤解と行き違いはあったとはいえ、お互いを大切に思いやって、愛しあっている二人と知り合えたことはとても嬉しかった。
私の作ったウェディングドレスが呼び込んだ縁に、頬も緩んでいる。
小さな頃から縁遠かった、人間関係の新規開拓。
自ら望み、行動を起こしたわけじゃないけれど、それでも。
新しい縁に、自分の中の扉が一つ開かれたような気がした。
失礼します」
にっこりと笑って、私は更衣室へ向かった。
まだ何か言い足りなさそうな表情の川原さんは、小さく苦笑して
「ありがとう」
と呟いた。
今日知り合ったばかりの川原さんとの数時間は、慌ただしくて訳の分からないものだった。私のウェディングドレスを婚約者の紗代子さんに着せたいと、無理矢理の展開を強いた川原さんの本心は、結局は別のところにあった。
そして、婚約者の紗代子さんの本心も、川原さんにちゃんと伝えられていなかった。
私が作ったウェディングドレスなんかよりも、やっぱり愛する川原さんの作ってくれたウェディングドレスを着て結婚式を挙げたいと話す紗代子さんは可愛らしくて。
二人の痴話げんかに巻き込まれただけの私は単なる傍観者。
関係のない第三者だ。
それでも、なんだか気持ちは温かかった。
誤解と行き違いはあったとはいえ、お互いを大切に思いやって、愛しあっている二人と知り合えたことはとても嬉しかった。
私の作ったウェディングドレスが呼び込んだ縁に、頬も緩んでいる。
小さな頃から縁遠かった、人間関係の新規開拓。
自ら望み、行動を起こしたわけじゃないけれど、それでも。
新しい縁に、自分の中の扉が一つ開かれたような気がした。