揺れない瞳
私が何に落ち込んでいるのかを、察してくれたように、何も言わずに見つめてくれる央雅くんから目が離せない。

私を包み込む静かな優しさが、体に伝わってくる。

私を好きだと言ってくれた央雅くんの言葉がよみがえってきて、途端に照れ臭くなる。一方では、こんなに幸せな気持ちが現実なのかと不安にもなる.

照れ臭さと不安な気持ちに揺れながら、それでも央雅くんから目を離せないでいると、低くて厳しい芽依さんの声が響いた。

「央雅、絶対にいいかげんな事はしないでね。何があっても、私は結乃ちゃんの味方だから。わかった？」

はっとして視線を向けると、夏芽ちゃんを抱いたままの芽依さんが、今まで見せた事のない真面目な表情で、央雅くんを睨んでいた。

「何か問題があって、傷つくのは女の子だから。付き合うのなら覚悟を決めて付き合いなさい。私は結乃ちゃんが大好きなんだからね」

普段とは違う厳しい口調で言い切る芽依さん。
央雅くんに向けられた言葉には、単純ではない思いが込められていると感じた。

すると、私の肩を抱き寄せながら、央雅くんが答えた。

「芽依ちゃんが心配するような事にはならないよ。ちゃんと大切にするから」

ゆっくりと話す様子には、芽依さんに気持ちを理解してもらいたいという央雅くんの思いが感じられて、じわじわと、嬉しさが溢れてくる。


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