揺れない瞳

③

央雅くんが私を好きだと言ってくれた気持ちを大切にしながらも、私にはこれからどうしたらいいのかがわからない。

親からの愛情でさえ満足に与えられない日々を過ごしてきたせいか、央雅くんが見せてくれる優しさや愛情に、どう反応したらいいんだろうと、戸惑ってばかり。

愛情を与えられる事も、与える事も、それが当たり前だと受け入れるなんてできないし、慣れる日がくるとも思えない私には、この先も央雅くんが側にいてくれる為にはどうしたらいいのか、その方法が見つけられない。

何度となく『好きだよ』と笑顔を向けてくれる央雅くんのように、私は央雅くんがホッとできる空気を作る事ができているのか、不安でたまらない。

出会ってから私に見せてくれていた央雅くんの仕草や言葉からは、明らかな私への愛情は感じられなかった。どちらかというと、私との一定の距離を優先して、二人の間に見えない壁を作っていたようにも感じていたのに。
あの日私の事を『好きだ』と告げてくれて以降、何度も同じ言葉をささやいてくれる央雅くんからは、そんな過去なんてなかったかのように、ただまっすぐ私を大切にしてくれる。

『結乃が俺の側にいるって、こんなに幸せ事なんだな』

……ここまで甘い言葉をかけられて、私は一体どう答えていいのか、誰か教えて欲しい。




「で、のろけてるわけ？」

ふっと顔を上げると、私の話を黙って聞いていた加絵ちゃんの顔があった。

苦々しく口元を歪めているけど……まさか、怒ってる？