揺れない瞳
確かに私と目が合ったはずなのに、不機嫌な様子を見せた後、何事もなかったかのように表情を笑顔に変えた央雅くんは、カウンターに座っているお客さんに話しかけた。
女の人が、カウンターの向こう側にいる央雅くんに向かって身を乗り出している。
首を傾げている後姿しか見えないけれど、その女の人が必要以上に央雅くんに近づいているように見えて、なんだか落ち着かない。
そして、時折言葉を交わしながら、にこやかな笑顔をお客さんに向ける央雅くんの様子に驚いてしまった。
普段から私を大切に思う気持ちを見せてくれて、優しく穏やかに笑ってくれる表情や仕草には慣れてきたけれど、今お客さんに振りまいている笑顔は初めて見る笑顔。
お客さんに笑いかける表情のどこにも憂いがなくて、単純に明るい雰囲気を纏った様子は、いつも私が感じる雰囲気ではないせいかまるで別人のように見える。
お客さんの言葉ににこやかに相槌をうちながら見せる笑顔は、私へのものではく、央雅くんの目の前にいる女の人のもの。
二人にしかわからない会話から生まれる親しげな空気が、次第に私の気持ちを落ち込ませていく。
「何食べる?ここはなんでもおいしいけど……ん、気になる?」
央雅くんに視線を向けたままの私の目の前で、加絵ちゃんが上下に手を振っている。
はっと意識を戻した私は、体を加絵ちゃんに向けた。
そして、小さく笑って見せると、テーブルに広げられているメニューに意識を集中させた。
女の人が、カウンターの向こう側にいる央雅くんに向かって身を乗り出している。
首を傾げている後姿しか見えないけれど、その女の人が必要以上に央雅くんに近づいているように見えて、なんだか落ち着かない。
そして、時折言葉を交わしながら、にこやかな笑顔をお客さんに向ける央雅くんの様子に驚いてしまった。
普段から私を大切に思う気持ちを見せてくれて、優しく穏やかに笑ってくれる表情や仕草には慣れてきたけれど、今お客さんに振りまいている笑顔は初めて見る笑顔。
お客さんに笑いかける表情のどこにも憂いがなくて、単純に明るい雰囲気を纏った様子は、いつも私が感じる雰囲気ではないせいかまるで別人のように見える。
お客さんの言葉ににこやかに相槌をうちながら見せる笑顔は、私へのものではく、央雅くんの目の前にいる女の人のもの。
二人にしかわからない会話から生まれる親しげな空気が、次第に私の気持ちを落ち込ませていく。
「何食べる?ここはなんでもおいしいけど……ん、気になる?」
央雅くんに視線を向けたままの私の目の前で、加絵ちゃんが上下に手を振っている。
はっと意識を戻した私は、体を加絵ちゃんに向けた。
そして、小さく笑って見せると、テーブルに広げられているメニューに意識を集中させた。