揺れない瞳
自分が話した言葉に、自分で照れた。
今日限り、もう二度と会わないに違いない央雅くんに対してだから言える言葉。
これからも付き合いが続くのだとすれば、次に会う時が恥ずかしくて言えない言葉だ。

央雅くんに会えて嬉しかったなんて。

普段の気弱な自分からは決して言う事ができない言葉が、私の緊張感を大きくする。

「俺も、結乃ちゃんに会えて楽しかったし嬉しかった。
頭数合わせで行ったコンパだけど、行って良かったよ」

「はい……?」

「そんな困った顔するなよ。手をつないでても平気だったくせに」

くすくすと笑う央雅くんは、どこか意地悪に見える。

意地悪で余裕もたくさんあって、私の気持ちなんか全て見通しているように。

「で、とりあえず連絡先欲しいから携帯貸してくれないか?」

えっと……連絡先って一体。なんの事だろう。

そして、にやりと笑う央雅くんに驚いたまま、私は動けなかった。



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