揺れない瞳

……どうしてだろう。私に会いたくなかったのかな。
私を好きだと言ってくれた言葉に甘えて、調子にのっちゃったのかな。

恋人ができるなんて初めての事だから、どこまで自分の気持ちを出していいのかわからない。
どれだけ我慢しなきゃいけないのかもわからない。

央雅くんと付き合っていくのは、甘く楽しい事ばかりじゃないって、わかっていたはずなのにな。

とにかく今日は、央雅くんを怒らせてしまったんだ……。

落ち込む私の気持ちを更に傷つけるように、央雅くんの目の前には、さっきまで央雅くんと仲良く話していた女の人が親しげに身を寄せている。

聞きたくないのに、やけに響く高い声が耳に入ってくる。

「ねえ、あの女の子って央雅くんの友達?それとも祥くんの友達?」

女の人が、ちらちらと私を気にしながら央雅くんに問いかける。
そっと見ると、整った顔で私を見遣る目がひどく冷たくて、思わず俯いてしまう。
化粧だって簡単で、どう見ても野暮ったい私を見て、少し笑ってるような気がして、また一つ、落ち込んだ。

きっと、央雅くんを好きなんだろうな。
恋愛には経験値が低い私だけど、それくらいは一目でわかる。
見た目に秀でている央雅くんだから、女の子から好かれるのはあたりまえだろうけど、露骨に見せられると逃げ場がなくてつらい。




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