揺れない瞳
きっと、今結乃に夢中になっている俺が本来の姿に違いない。

恋愛感情からは程遠い、遊びに近い感情で女と付き合っていた俺は、きっと無理をしていた俺の姿だったんだろうと思う。
芽依ちゃんへの申し訳なさや自分の存在意義を疑問に思っている負の感情に支配され、恋愛に対して冷めた自分を作っていた。

今でも、芽依ちゃんへの感情の中に、俺が生まれた事への申し訳なさはある。
芽依ちゃんが幸せでいるのかどうか、ふとした瞬間に不安になる。

そんな感情を抱えたまま恋人を作っても相手を幸せにできないと感じていたから、本気の恋愛をしていなかった。

けれど。

もしも幸せにしてやれないとしても、どうしても結乃は手離せない。
出会ってから好きになるまでは一瞬の事だった。
そして、これからの未来には彼女がどうしても欲しい。

芽依ちゃんへの感情に支配されていた俺が一瞬で変わった。

本来の姿に変わった。
本気で好きになれる女に出会えば、こうもあっさりと自分は変わってしまうのかと苦笑いも出ない。

人は、何かの弾みで、あっさりと変われる。
結乃の存在が俺を変えた。

結乃なしの人生が考えられない俺。
そんな俺が、嫌じゃない。

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