揺れない瞳
ランチにはまだ早い時間に待ち合わせをしたのは、その前に寄りたいところがあったからだ。
結乃と手を繋いで、大通りに並ぶ店の一つを目指した。

クリスマスシーズンまっただ中で、大通りにも、沢山の店舗にも、色とりどりに装飾が施されて綺麗だ。
その一つ一つに目を輝かせながら歩く結乃を見ているだけで、俺は嬉しくなる。
これまで何度も歩いた通りだけど、こんなに浮き足立つ気持ちで歩いた事はない。
結乃と繋いだ手に、ぎゅっと力を入れると、照れ臭そうに俯くその横顔が愛しくてたまらない。

しばらく歩いて、目当ての店の前に着いた時

「ここだよ」

そう言った俺に、戸惑った表情を向けた結乃。

「あの……ここって」

「そう、ここでクリスマスプレゼントを選ぼうと思ってるんだ」

「でも、ここって、その……」

「知ってる?『ジュエルホワイト』って、女の子に人気だってお店にくるお客さんがよく言ってたから来たんだけど。
近くに住んでて、そんな事全然知らなかったんだけどな」

妙に照れる気持ちを隠すように言う俺をじっと見つめながら、結乃は

「……大学の友達も、好きだって言ってた……」

囁くような小さな声で、つぶやいた。

まるで、信じられないという様に。
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