揺れない瞳
苦しそうな父さんに、どう言葉をかけていいのか、どこまで母さんとの関係を聞いていいのかがわからなくて。
私も黙り込んでしまった。
母さんが嘘をついていたという驚きの事実に、正直気持ちは大きく揺れている。
父さんがその嘘を信じてしまうだけの『裏付け』ともいうべき母さんの以前の恋人の存在。
母さんは、父さんに嘘をついてまでどうして私を引き取ったんだろう。
そして、どうして私をあっさりと手放したんだろう。
「奈々子は、本当に可愛くて。長く付き合っていた恋人もいたんだけど、俺はずっと好きだった。その思いが通じるとも思ってなかったから、友達として側にいるってだけで満足してたんだ。けれど、その恋人と別れて……奈々子は不本意な別れだったと思う。まだ別れた恋人の事が好きだったと思う。
それでも、俺は振られる覚悟で奈々子に気持ちを伝えて、奇跡的に気持ちを受け入れてもらって。恋人になったんだ。そして……」
「私が生まれた……?」
「ああ。奈々子にそっくりな、本当に可愛らしい結乃が生まれてきてくれたんだ」
その日を思い出しているのか、ほんの少し遠くを見つめるような瞳は温かくて、私がこの世に生まれてきて、少なくとも父さんだけは喜んでくれたと思える。
それだけで、なんだか救われた気がする。
私も黙り込んでしまった。
母さんが嘘をついていたという驚きの事実に、正直気持ちは大きく揺れている。
父さんがその嘘を信じてしまうだけの『裏付け』ともいうべき母さんの以前の恋人の存在。
母さんは、父さんに嘘をついてまでどうして私を引き取ったんだろう。
そして、どうして私をあっさりと手放したんだろう。
「奈々子は、本当に可愛くて。長く付き合っていた恋人もいたんだけど、俺はずっと好きだった。その思いが通じるとも思ってなかったから、友達として側にいるってだけで満足してたんだ。けれど、その恋人と別れて……奈々子は不本意な別れだったと思う。まだ別れた恋人の事が好きだったと思う。
それでも、俺は振られる覚悟で奈々子に気持ちを伝えて、奇跡的に気持ちを受け入れてもらって。恋人になったんだ。そして……」
「私が生まれた……?」
「ああ。奈々子にそっくりな、本当に可愛らしい結乃が生まれてきてくれたんだ」
その日を思い出しているのか、ほんの少し遠くを見つめるような瞳は温かくて、私がこの世に生まれてきて、少なくとも父さんだけは喜んでくれたと思える。
それだけで、なんだか救われた気がする。