揺れない瞳
すっかり暗くなった住宅街を、央雅くんと足早に歩いている。
しっかりと繋がれた右手は温かくて、寒さが厳しい夜道も楽しくなってくる。
『実物を見に行こう。店に行けばすぐに見る事できるから、今から行こう』
雑誌に掲載されていた絵と記事を読み終わると、央雅くんはそう言って私と一緒にバイト先に向かった。
私の意見も聞かないままの行動力にはびっくりしたけれど、実は嬉しかった。
まさかあの絵が央雅くんのバイト先に飾ってあるなんて、考えてもみなかった。
確かにあのお店には、あらゆるテイストの、それもかなりの点数の絵が飾られていた。
まるで美術館だと思えるような雰囲気の、『居酒屋』だと央雅くんは言うけれど。気軽に入る事のできるBarだと言った方が正確かもしれない。
そんな店内の雰囲気は、私を魅了するには十分で、色々な絵を見たつもりでいたけれど、あまりにも多くの絵に圧倒されて、一度に全てを見るなんて無理だった。
そして、央雅くんが気付かなければ、きっとこれからもあの絵の存在に気づかなかったはず。
「せっかくバイトを休んで時間を作ってくれたのに、結局お店に来てしまって。ごめんね」
「別にいいよ。俺が、あの絵を早く見たくてたまらないんだ。
いい絵だなって思ってた絵が結乃のお母さんが書いたものって、なんかぞくぞくする」
その言葉通り、央雅くんは心底わくわくしているように見える。
普段は私の歩幅に合わせて歩いてくれるけど、今は気が急いているように微妙な速さ。
おかげで、私は少し小走りだ。
でも、私だってあの絵を早く見たい。
母さんが描いてくれた、幸せだった頃の親子三人に早く会いたい。
しっかりと繋がれた右手は温かくて、寒さが厳しい夜道も楽しくなってくる。
『実物を見に行こう。店に行けばすぐに見る事できるから、今から行こう』
雑誌に掲載されていた絵と記事を読み終わると、央雅くんはそう言って私と一緒にバイト先に向かった。
私の意見も聞かないままの行動力にはびっくりしたけれど、実は嬉しかった。
まさかあの絵が央雅くんのバイト先に飾ってあるなんて、考えてもみなかった。
確かにあのお店には、あらゆるテイストの、それもかなりの点数の絵が飾られていた。
まるで美術館だと思えるような雰囲気の、『居酒屋』だと央雅くんは言うけれど。気軽に入る事のできるBarだと言った方が正確かもしれない。
そんな店内の雰囲気は、私を魅了するには十分で、色々な絵を見たつもりでいたけれど、あまりにも多くの絵に圧倒されて、一度に全てを見るなんて無理だった。
そして、央雅くんが気付かなければ、きっとこれからもあの絵の存在に気づかなかったはず。
「せっかくバイトを休んで時間を作ってくれたのに、結局お店に来てしまって。ごめんね」
「別にいいよ。俺が、あの絵を早く見たくてたまらないんだ。
いい絵だなって思ってた絵が結乃のお母さんが書いたものって、なんかぞくぞくする」
その言葉通り、央雅くんは心底わくわくしているように見える。
普段は私の歩幅に合わせて歩いてくれるけど、今は気が急いているように微妙な速さ。
おかげで、私は少し小走りだ。
でも、私だってあの絵を早く見たい。
母さんが描いてくれた、幸せだった頃の親子三人に早く会いたい。