揺れない瞳
その声を聞いた加賀さんは、一瞬驚いたように目を大きくしていたけれど、央雅くんに苦笑しながら
「ちょうど良かった。遅いから店の男の子に送ってもらおうと思ってたんだ。
もう、大丈夫だから結乃ちゃんあがっていいよ」
「あ…はい。でも…」
「いいのいいの。央雅なら安心だからね。今日は遅くまでありがとう。
助かったよ」
とっとと帰っていいよっていうような手振りで私をあがらせてくれる加賀さんに、どう答えていいのかわからないまま戸惑う私。
まだお店は閉店していないのに帰っていいのかって思うし央雅くんが送ってくれるって言ってくれる現実も非現実的で。
何度見上げても、私の傍で余裕を見せる央雅くんが、今ここにいる事も信じられない。
どうしてここにいるのか…。
よくわからなくて。
「央雅くん…どうして…」
どうしてここにいるの?
そう聞こうとした時、
「俺が送るって言ってたんだけど?」
不機嫌な声が、私と央雅くんに落とされた。