揺れない瞳
彼女はきっと、央雅くんの事が気に入ってるんだろう。
あまりにも露骨に央雅くんに向けられる大きな笑顔は、彼女の魅力を最大限にアピールしていて、同性の私でさえもほれぼれしてしまう。

モデルをしているらしいスタイルはもちろん完璧で、華奢で長い手足は真っ白でシミ一つない。もちろん、私みたいに手入れを怠るなんてことはないんだろうし、指先のマニキュアに至るまでの気の使い方には感動すら覚える。

それは、私には関わりのないものだと思っていたからだけど。

努力して、気を遣って、自分を磨けば、こんなに綺麗な女性になれるのだろうか。今からでも遅くはないのだろうか。

央雅くんと並んでも違和感のない京香さんみたいに綺麗な女性に、私もなりたいと強く思った。

京香さんの体が揺れる度に一緒にふわりと揺れているワンピースの裾のレースが可愛くてじっと見つめていると、どう聞いても好意的ではない声が聞こえた。
ゆっくりとワンピースのレースから視線を上げると、不機嫌そうに私を見ている、というよりも睨んでいる目にたどりついた。

細められた目からは、

『この女、誰?』

という気持ちが伝わってきて、震えた。





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