揺れない瞳
きつい目を向けられ、震える私の心だけど。
どうしてだろう、全然怖くない。
これまでなら自分の中に閉じこもって、黙りこくっていたに違いないのに、ちゃんと京香さんの目を見る事ができる。
居心地がいいわけじゃないけれど、この場をやり過ごすために京香さんから逃げる事もせず向き合っている自分が感じられる。
「不破結乃、です。はじめまして」
「……はじめまして。京香です。芽実さんとはモデルのお仕事でよくしていただいているの。央雅くんとも知り合って一年くらいかしら」
値踏みするように見られているのがわかる。
着ている服だけで、その人の人間性全てがわかるとは思わないけれど、ちょっとほっとする。
さっき、父さんの家を出る時に愛子さんからプレゼントされた服を早速着ていたから、それなりに身なりは整ってるはず。
誰もが知る有名ブランドのロゴがついているこの服、京香さんなら知っているだろう。
そんな私の安易な考えは当たっていたようで、『へえ』と一言つぶやくとぷいっと顔を反らした。
……今度は、何が気に入らないんだろ。
「で、央雅くんとはいったい、どんな……」
相変わらず機嫌の悪い声。その言葉が終わらないうちに。
「俺の婚約者だよ。もうすぐ佐伯結乃になるからよろしくって芽実さんにも言ってたところ。……これで納得した?」
「え?婚約者?」
「そう、なるべく早く入籍するつもりなんだ。学生結婚になるけど、ようやく俺のものになった恋人を他の男にもっていかれるのも嫌だし」
「……そうなんだ……」
まさか、結婚なんて言葉を聞かされるとは思ってなかったに違いない。
京香さんは驚きで言葉が出ないようだった。ただ央雅くんを見つめながら立っていた。
そんな不穏な空気の中、芽実さんが明るい声をあげた。
「そうだ、今度のうちでやるショーに結乃ちゃんがモデルで出るのよ。今回は京香ちゃんにはスケジュールが合わなくて出てもらえないけど、これから結乃ちゃんと顔を合わせる事もあるだろうし、よろしくね」
あっけらかんと言ってしまった芽実さんは、隣の奏さんから渋い顔をされても気づかないふり。京香さんの不機嫌さと芽実さんの明るさがかみ合わなくても気にしていないようだ。
どうしてだろう、全然怖くない。
これまでなら自分の中に閉じこもって、黙りこくっていたに違いないのに、ちゃんと京香さんの目を見る事ができる。
居心地がいいわけじゃないけれど、この場をやり過ごすために京香さんから逃げる事もせず向き合っている自分が感じられる。
「不破結乃、です。はじめまして」
「……はじめまして。京香です。芽実さんとはモデルのお仕事でよくしていただいているの。央雅くんとも知り合って一年くらいかしら」
値踏みするように見られているのがわかる。
着ている服だけで、その人の人間性全てがわかるとは思わないけれど、ちょっとほっとする。
さっき、父さんの家を出る時に愛子さんからプレゼントされた服を早速着ていたから、それなりに身なりは整ってるはず。
誰もが知る有名ブランドのロゴがついているこの服、京香さんなら知っているだろう。
そんな私の安易な考えは当たっていたようで、『へえ』と一言つぶやくとぷいっと顔を反らした。
……今度は、何が気に入らないんだろ。
「で、央雅くんとはいったい、どんな……」
相変わらず機嫌の悪い声。その言葉が終わらないうちに。
「俺の婚約者だよ。もうすぐ佐伯結乃になるからよろしくって芽実さんにも言ってたところ。……これで納得した?」
「え?婚約者?」
「そう、なるべく早く入籍するつもりなんだ。学生結婚になるけど、ようやく俺のものになった恋人を他の男にもっていかれるのも嫌だし」
「……そうなんだ……」
まさか、結婚なんて言葉を聞かされるとは思ってなかったに違いない。
京香さんは驚きで言葉が出ないようだった。ただ央雅くんを見つめながら立っていた。
そんな不穏な空気の中、芽実さんが明るい声をあげた。
「そうだ、今度のうちでやるショーに結乃ちゃんがモデルで出るのよ。今回は京香ちゃんにはスケジュールが合わなくて出てもらえないけど、これから結乃ちゃんと顔を合わせる事もあるだろうし、よろしくね」
あっけらかんと言ってしまった芽実さんは、隣の奏さんから渋い顔をされても気づかないふり。京香さんの不機嫌さと芽実さんの明るさがかみ合わなくても気にしていないようだ。