揺れない瞳
あのウェディングドレスを気に入ってくれた彼女と結婚した川原さんは、宣言通りゲーム業界に就職し、最近かなり売れているゲームソフトを開発した。
雑誌でその顔を見かける度に、私も嬉しくなる。

川原さんは、そのゲームソフトの中に登場するお姫様が着るウェディングドレスに、私が作ったあのドレスを採用して話題にもなった。
自分でデザインすればいいのに、紗代子さんの強い希望で使わせてほしいと連絡があった時、驚いたのはもちろんだけど、嬉しい気持ちの方が強くて二つ返事でＯＫした。

そして、そのウェディングドレスを着て結婚式を挙げてくれた愛子さんは１歳の女の子のママとなり、慌ただしくも幸せな毎日を送っている。

『愛結』と名付けられた私の妹にメロメロな父さんは、私の成長を側で見守れなかった後悔をはらすかのように愛結ちゃんにべったりだ。
社長なのに、威厳もなく。お手上げだ。

幸せのウェディングドレス。

最近では、私の中ではそう呼んでいるドレス。

来週再び人前に出る事となっている。

加絵ちゃんが、披露宴で着てくれることになっていて、楽しみにしている。
ご両親が経営する呉服屋さんを継いだ加絵ちゃんは、紆余曲折を経て、祥くんと結婚する。
長い間、二人とも教えてくれなかったけれど、祥くんは加絵ちゃんの幼馴染であり、親同士が勝手に決めた許嫁だったらしい。今どきそんな話本当にあるんだなと、びっくりした。
そのあたりの話を詳しく聞きたい。すごく。
何故二人は結婚する事になったのかとか、親に逆らうことはできなかったのかとか。聞きたくてたまらない。

ただ、二人一緒に並ぶ姿は愛情に満ちていて、確実に幸せな将来が待っているってわかる。だから、とりあえずはおめでとう、だ。でも、色々気になる。
新婚旅行から帰ってきたら、新居に押しかけよう。



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