揺れない瞳

「…じゃ、気を付けて帰れよ。また明日な」

硬い表情のまま、颯くんは仕事に戻った。
いつも優しくしてくれるのに、悪い事をしてしまったかな…。
せっかく送ってくれるって言ってくれたのに。

でも、颯くんにしても、こんなに遅い時間から送ってたら帰るのがかなり遅くなるだろうし。

「じゃ、着替えておいでよ。外で待ってるから」

央雅くんは、そう言って軽く笑うと、店の外に出ていった。

その後ろ姿を見ながら、どうしてこんな展開になったのかよくわからないまま。
浮かんでくる緊張感に体はぎゅっと小さくなりそう。
心臓もとくとくと跳ねたまま。

慣れてないこんな緊張感をどうしていいのかわからない。
それでもやっぱり。
央雅くんに再び会えた事の喜びの方が大きくて、自然と気持ちは暖かくなっていく。

普段全く味わったことのない重くて不自由な甘い痺れが怖くもあるけれど…。
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