揺れない瞳
「昨日、芽依ちゃんの家に遊びに行ったんだ。で、瞳さんの店で結乃がバイトしてるって聞いて見に行ったんだ。毎日入ってるわけじゃないって聞いたから今日会えてよかったよ」

「はい…。週2回くらいのんびりとやらせてもらってるんで…」

時々私を優しく見ながら話す央雅くんを見上げながら、どうにか答えたけれど、やっぱり声は震えてるような気がする。
緊張してるのは隠せない。

心臓だってばくばくと激しく動いてて、まるで静かな住宅街に響くような錯覚さえ覚えてしまう。

「こんな暗い道を帰ってるの?」

「あ…いつもはもう少し早いし、加賀さんが誰か男の人に送ってもらえるように頼んでくれたりもするし…。大丈夫」

「ふーん…。あのさっきの男とか?」

「男…?えっと…颯くんの事…?」

「そう。結乃を送るって粘ってた男」

低い声が深夜の住宅街に響いて、一瞬どきっとする。
暗くてよくわからないけれど、央雅くんの表情は妙に歪んでて機嫌が良くないのがわかる。
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