揺れない瞳
「…あ、ありがとうございました。遅いから、気を付けて帰ってください」

「んー。やっぱり家には入れてくれないわけ?」

「あ、その…そんなお見せするような大した部屋でもないんです…だから…」

ようやく央雅くんに挨拶して部屋に戻ろうとしたのに、央雅くんは、握ったままの手を更に握りしめて。
俯く私を見てる。
からかうような声。私の焦る顔を笑って。
私の返事を待ってる。

多分慣れてるんだろうけど。女の子の部屋に入るなんて慣れてるんだろうけど、私にとっては初めての事。
こんな深夜に男の人を部屋にあげる意味を深読みしてしまってどう返事していいのかわからない。

「…俺もそんなに慣れてない。女の子と付き合ったことないわけじゃないけど、結乃が考えてるより経験値は低いから」

「え?」

「顔に出てるし。俺の事女の子に慣れてるって考えてるだろ?」

少し拗ねたような声に、ドキッとする。

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