揺れない瞳



その晩は、眠れなかった。

マンションに入る私を見送った後、帰って行った央雅くんの事が私の頭から離れなくて眠れないまま朝を迎えた。

課題の作品を作る為に徹夜する事なんてしょっちゅうだから、徹夜は慣れてるけど、今朝は、普段の徹夜明けよりも神経が高ぶっている。

それは、学校に来ても落ち着く気配はなくて、私の高ぶったままの神経は、ずっとずっと央雅君に支配されているようだった。

「ふーん。それって央雅くんが結乃の事を気に入ったって事じゃない?」

「……気に入る……?え……」

「わざわざバイト先まで迎えに行って、送ってくれたんでしょ?
結乃の事気に入ったって考えるのが自然だし」

くすくす笑いながらコーヒーを飲む加絵ちゃん。
私は、大学のカフェでランチをとりながら、昨日の事を話した。
私の中では大きな悩みなのに、そんな事、些細な事だと軽く流されたようでなんだか拍子抜けした気分になる。

「突然結乃のバイト先に行っちゃうなんてびっくりだけど、コンパの時、央雅くんと結乃仲良くやってたし連絡あっても不思議じゃないよ。
なかなか二人気が合ってたしね」

あっさりとしたその口調に反論したくて口を開くけれど、何をどう言えば自分の気持ちがちゃんと伝わるのかわからない。

央雅くんが私を気に入ってくれたって言われても、夕べの央雅くんの様子を目の前で見てた私にはそうは思えない。

央雅くんから嫌われているとは思わないけれど、コンパで会った後の甘い想いから私を気にかけてくれているとも思えない。

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