揺れない瞳
「結乃を大切にしてくれそうだし、悩むより慣れろ。
央雅くんと親しくできるって事は恋愛にだって慣れてくって事だし。
重く考えずに仲良くしときなさい。
結乃の気持ちも央雅くんの気持ちも、そのうち見えてくるよ」

「加絵ちゃん……」

「結乃も、央雅くんを大切にしてみたら?」

ゆっくりとした加絵ちゃんの言葉は、私の怖がるものの全てを指してるように聞こえる。

大切なものを作るのが苦手だし、大切にされるのも苦手だから。

「いつか央雅くんを大切な存在に思えたら。結乃はきっと、幸せだよ」

真っ直ぐな視線と思いが私に向けられて、まるで洗脳されてるようで怖くなる。
大切に思える人がいるならば、それは私の人生をひっくり返すくらいの大きな変化。

そんな事ありえない未来だと、そう頑なに信じて生きているけれど、加絵ちゃんの自信ありげな瞳には、私に魔法をかけてくれそうな力があって。

「…ふふっ」

その魔法を信じてしまいそうになるのが怖くて。
苦笑い……。

これが、今の私の精いっぱい。



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