揺れない瞳
落ち着かない気持ちのままその日の授業が終わって、夕方加絵ちゃんと大学を出ると。
大学前の通りの向こうに見覚えのある顔が見えた。
たちまち速くなる鼓動を感じながら、足も歩みを止めて。
隣にいる加絵ちゃんの事も忘れて、私の視線の先に立っている人を見つめるしかできない。
まさか、ここで会うとは思わなかった。
彼が、この大学周辺に用があるとも思えない。
知り合いがいるなんて偶然があるとも……考えにくい。
やっぱり、彼の視線も私を捉えて離さないように、私に会いにここまで来たとしか思えなくて。
その理由が思い当らないし、会いたいとも会えるとも、考えるなんてしなかった私にはどうする事もできずにただ……。
身動きできずにただ、その姿を見るしかできなかった。