揺れない瞳
バイトに入る予定だったけれど、精神的にそんな気分にはなれなくて、加賀さんには申し訳ないけれど休みたいと電話をいれた。
滅多にシフトをキャンセルする事のない私がバイトを休むってことで、加賀さんはかなり心配してくれていたけれど、曖昧に濁して休みにしてもらった。

加絵ちゃんとは大学近くの駅で別れた後一人で帰ってきたみたいだけど、その間の記憶ははっきりしないまま。

気が付けば、自分の部屋に帰っていた。
きっと、無表情な顔で電車にも乗って、淡々と帰って来たに違いなくて。

すれ違った人は、多分妙な目で私を見ていたはず。

ふうっ…。

小さく息を吐いて、気持ちを普段通りに取り戻そうとしてもなかなか簡単にはいかない。
恐れとは違うけれど、会わないつもりでいた彼と会った事は私にとっては不安この上ない感情が湧き上がってくる。

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