揺れない瞳
ちょっと機嫌の悪くなったような央雅くんの声にびくっと体は跳ねてしまう。
声も小さくなるし。
央雅君と今こうして話しているのもどうしてなのか。
まだ落ち込んでいる心で考えるのは難しくて、央雅くとの関係を探るよりも、今迎えに来るっていう央雅君をどうにか断らなきゃ…って事だけで頭はいっぱいになる。

「今、家にいるので…。迎えの必要はないんです…」

『はっ?勝手に帰るなって言ったのに、何で先に帰るんだ?』

「ぁ…バイト休んだので。大学からすぐに帰ってきたから…」

どう聞いても不機嫌な央雅くんの声は、携帯を通しても不機嫌なままで私の気持ちをさらに落ち込ませる。

「あの…。今、ちょっと…。もう家にいるので大丈夫です。
だから…。また、」

この数時間、黒い切ない悲しみと苦しみに覆われていた心は限界を越えている。
こんな時に優しくない央雅君の声は、私の心をどんどん荒れさせていくだけで、普段以上に神経質になっている私には央雅君を気遣う余裕もなくなってしまった。

「じゃ…。また…」

多分、涙声になってしまってる声で、通話を切った。
そのまま携帯をソファに投げ出して。

我慢しきれずに零れ落ちるに涙に任せて。
苦しい気持ちを思いっきり流した。

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