揺れない瞳
一瞬だった。
私へ距離を縮めた央雅くんは、あっという間に私の腰を引き寄せてその胸に私を抱え込んだ。
ぱふっと飛び込んだ私は、身動きもとれないままにただ、央雅くんに強く抱きしめられて棒立ちのまま。
「央雅君…」
尚も続く涙声で小さく呟いても、首筋に吐息を落とす央雅君の唇からは何の返事もない。
さっきよりも意思を持った指先が背中を這う感覚にも意識は持っていかれて、どうなっているのか混乱してしまう。
「泣かせて悪かった。…慣れてないんだ…」
央雅くんの唇は、艶めいた声を吐き出しながら私の鎖骨を滑っていく。
まるで私を味わうようにゆっくりと。
「…あ…っ…」
後頭部を固定されて、鎖骨から胸元へと唇は動き回りながら熱い吐息を落としていく。
自分でも気づかなかった敏感な場所を探り当てた央雅くんは、わざとそこを刺激する。
思わず出てしまう私の声なんか気にも止めずに、何度も何度も、同じところを唇で甘噛みする。
「…や…央雅くん…やめて…」
ようやく出た私の声だけど、あまりにも小さくて途切れ途切れで、央雅くんに聞こえたのかどうかわからない。
まっすぐ下におろしたままどう動かせばいいのかわからなかった両手で、央雅くんの胸を押してみるけれど、びくともしないくらいに私を抱きしめているから抵抗にもなってない。
「手は俺の背中に回すんだ」
そう言って、央雅くんは私の両手を背中に回した。