揺れない瞳
『芽依ちゃんに誓って何もしない』
って言っておきながら、キスを交わして抱きしめ合って。
央雅くんの真夜中の訪問は思ってもみなかった事ばかりだった。
きっと、央雅くんも同じ思いに戸惑ってると思う。
『驚かせて、泣かせて、悪かった』
明け方まで二人でたわいもない話をしながら、時々申し訳なさそうに何度か謝ってくれた。
二人でシュークリームを食べて、コーヒーを飲んで。
始発が動き始める頃に帰っていく央雅くんを見送るのは寂しかった。
大学が一限からあるってうんざりしながら、靴を履く背中を見てると切なくなった。
わたしの特別な人じゃないのにな…。
長い時間一緒にいたし、優しい言葉もかけてくれたし、初めてキスしたし……。
思わず引き止めたくなる。
背中のシャツを引っ張って、ここにいて欲しいって言ってしまいそうになる。