揺れない瞳
……私の立場でそんなことできるわけないけど。
今まで味わったことのない、もやもやする気持ちをどうすればいいんだろう……。

そんな後ろ向きな私の気持ちをくみ取る様子もなく、央雅くんはあっさりとした口調で。

「じゃ、俺、帰るから。ちゃんと戸締りしろよ。
しばらく寝るにしても、授業に間に合うようにちゃんと起きるんだぞ」

「あ……うん、大丈夫だよ」

央雅くんは、私の気持ちなんてお構いなしに帰ろうとしてる。

寝ていないから、疲れているように見えるけど、それすらどうってことのないような雰囲気だ。もしかしたら、外泊には慣れてるのかもしれない。

私一人が寂しい気持ちを抱えて、央雅くんは大して寂しくないんだろうな。
突然やってきて、私の気持ちを振り回して、さっさと消えていく。

なんだか、これまでの私の人生を凝縮してるみたいで悲しくなる。

私の側にとどまってくれる人なんて、誰もいないんだと、改めて実感した。

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