家族になろうよ!
「じゃあ、部屋に布団敷いてくるから。横になってていいぞ」
そう俺が声をかけた途端、優子はパタンと床に伏した。
ああ、この子は何も言わないんじゃない。
言えないんだ。
言えなくて、ひたすら我慢してしまうんだ。
こんなときでさえも。
もうできるだけ我慢はさせたくない。
優子の部屋の隅に綺麗に畳まれていた布団を、仕切りを無視して部屋の真ん中に敷いてやった。
互いの領域なんて、今はクソ食らえだ。
足元の覚束ない優子を励まして、どうにかこうにか部屋まで移動させ布団に寝かしつけた。
枕元にまだ水のたっぷり入っているコップを置く。
一仕事終えた心地で溜息をついたら、かすかに呼ばれた気がした。
「ごめんなさい……」
耳を澄ますと、それは優子の謝罪だった。
「迷惑、かけ……て……ごめんなさい……」
潤んだ瞳に浮かぶ怯えた色。
きっと、また怒鳴られるのが怖いんだ。
こんな目をさせてしまったのは、誰でもない俺自身だということを、俺は認めなければならない。
「もう、謝らないでくれ……」
枕元にひざまずき、布団の端を強く握り締めた。
昨日は怒鳴ってごめん。
体操服を届けてくれたのに、礼もせずに冷たいことを言ってごめん。
ずっと素っ気なくしてごめん。
向き合おうとせずに、逃げてばかりいてごめん。……